平昌オリンピック 周辺住民は無関心 ボッタクリの心配も

時事ジャーナル

2011年7月7日の深夜を超えた頃、韓国国民の視線がTV画面に集まっていた。2018年冬季オリンピックの開催地を決定する瞬間だった。ジャック・ロゲIOC(国際オリンピック委員会)委員長がどもる発音で「平昌」を叫ぶと全国民が歓呼した。

1988年のソウル五輪以来30年ぶりのオリンピック誘致に成功したのだ。二度の誘致に失敗し、10年がかりで生み出した奇跡だった。直・間接的経済効果65兆ウォンに達するという現代経済研究院の報告書は喜びを倍にした。

それから6年が過ぎた。平昌冬季オリンピックがわずか6ヶ月後に迫っている。道路、競技場などのハードウェアは、ある程度整備できた。問題は雰囲気だ。2011年誘致当時とはあまりにも違う。2011年当時、92%に達した誘致世論は、もはや見る影もない。国民の関心がオリンピックに集まらない。

「一つになった情熱」というスローガンが色あせる。韓国政府は平昌冬季オリンピックへの関心を高めるために全力を尽くしているが、現地の反応は芳しくない。このままでは「傷だけが残る祭り」になるのではないかという懸念まで出ている。何が問題なのか開催地域を訪ねた。

田舎の村の変身 ハードウェアは問題なし

整備を終えた高速道路

8月8日早朝、江原道に向かってハンドルを握った。平昌冬季オリンピックが6ヶ月後に迫った状況で、現地の雰囲気を感じるためだった。今年1月に平昌冬季オリンピックの準備現場を訪れた後、二回目の訪問だった。平昌に向かう道路の雰囲気は前回と違った。

1月は工事の真盛りだった高速道路は整備工事をほぼ終えたようだった。特にきれいに飾られたサービスエリアが目を引いた。ブラック・アンド・ホワイトインテリアですっきり整理されたレストラン、高級ホテルよりもきれいなトイレは外国人観光客を迎える準備が完了したことを示していた。

完成間近のオリンピック会場

3時間ほどかけて到着した平昌は慌ただしかった。古い2車線道路は整備の真っ最中だった。高速道路を抜けると正面に見えた大型造形物も新たに変身していた。去る1月当時工程率38.5%で建物の外壁と基本骨格しかなかったオリンピックプラザも壮大な威容を現した。

平昌冬季オリンピックの開会式と閉会式が行われる主要施設は3万5000席の座席設置が完了し建物の外観などの仕上げ作業の真っ最中だった。工事関係者は「9月の完成を控えて詰めの工事が順調に進んでいる」と説明した。

平昌オリンピック会場の工事進捗状況(8月7日)
完成
  • 江陵スピードスケート競技場
  • 江陵アイスアリーナ
  • 江陵ホッケーセンター
  • 関東ホッケーセンター
  • 江陵カーリングセンター
  • アルペンスキージャンプセンター
  • バイアスロンセンター
  • クロスカントリーセンター
未完成
  • アルペンシアスライディングセンター(94.95%)
  • 旌善アルペン競技場(89.6%)
  • 普光スノースタジアム(89.3%)
  • 龍平アルペン競技場(87.8%)

市街地整備も進む

寂れた繁華街も大きく変身していた。古い看板や絡まった電線が消え、商店街の看板は統一感が出るように整備された。商店街のあちこちで外壁交換作業を行っていた。狭い道路もあちこちで重機が並木を整備するのに忙しかった。
平昌は大関嶺一帯を対象に

  • オリンピックの象徴街路、市街地環境の整備
  • 老朽不良施設の整備
  • オリンピック輸送運営区間の拡充
  • 市街地街路環境造成

などを推進した。古い建物の外壁は、オリンピックをテーマにした壁画が立ち並び、市内のあちこちで互いに絡み合って汚れて見えた電線も地中化事業ですっきり消えた。

高速鉄道でソウル-江陵1時間28分

国内外の観光客を輸送するKTX建設も最終段階に入った。8月3日、原州から江陵までの複線鉄道区間にKTXを投入して試験運行を開始、段階的に速度を引き上げている。各種検査を終える10月ごろから営業運行に備え仁川空港駅から竜山駅、清涼里駅を経て珍富駅(平昌)・江陵駅まで試運転に入る。この区間が開通すると現在清涼里から江陵まで所要時間5時間47分(ムグンファ号基準)が1時間28分、4時間以上短縮する。

「オリンピック開幕日」を知らない開催地域住民

問題はソフトウェアだ。オリンピックの成否を左右する人々の熱気が上がらない。高速道路のサービスエリアを訪れた休憩客の中で平昌冬季オリンピックの広報施設に関心を示す人は少ない。江陵海水浴場に行く途中で横城サービスエリアに立寄っはパク・スンチョルさん(男・31)は

来年冬季オリンピックが開かれることは知っているが、正直なところオリンピックが成功するのかは分からない。こんな暑い日に冬季オリンピックの話をするのは変ですね

と語った。江陵でレストランを運営するボムさん(男・61)は、

人々が江陵を訪れるのは夏だけ。夏の書き入れ時で忙しいのに誰が冬季オリンピックのことを気にするのか

と反問した。オリンピックの開幕日を質問すると「来年初めくらいだろう」と回答した。繁華街で会った大学生チョン・ヒョンジュンさん(男・25)も「来年1月に開催するのではないか?いつ開幕するのかまでは知らない」と答えた。

オリンピックに無関心な韓国国民

平昌冬季オリンピックへの無関心は、世論調査の数字でも証明された。7月31日、文化体育観光部が発表した世論調査の結果によると、

  • 平昌オリンピックに関心がある
    • 3月 35.6%
    • 5月 40.3%
    • 7月 35.1%
  • オリンピックを観戦したい
    • 3月 9.2%
    • 5月 8.9%
    • 7月 7.9%

「平昌オリンピックに関心がある」という回答は35.1%だった。「オリンピックを直接観覧したい」と答えた人は7.9%にとどまった。3月と5月の調査よりも低くなった。この調査は文化体育観光部が世論調査専門機関メトリックスに依頼して、7月21~22日、15~79歳の国民1000人を対象に行った。

チケット売上不振

これはそのまま興行不振につながっている。組織委によると、1次販売期間(今年2月から6月)取引されたオリンピックのチケットは、総販売目標(107万枚)の21%(22万9000枚)に過ぎなかった。このうち、国内販売分は目標(75万枚)の6.9%(5万2000枚)にとどまった。

崔順実ゲート事件

冬季オリンピック開催に決定的な冷水を浴びせたのは崔順実国政壟断事態(崔順実ゲート事件)だった。冬季オリンピック関連事業に崔順実が介入した状況が明らかになり、国民の目に不正の温床のように映っていた。

企業スポンサーも困難を経験した。企業は朴槿恵大統領の要請でミル・Kスポーツ財団を後援したことが問題になると、後援活動をを控えるようになった。崔順実国政壟断事態が一段落し大統領が変わると企業は後援活動を再開したが、オリンピックはまだ目標予算が不足した状況にある。

度重なる五輪組織委トップの交代

オリンピックを総括する組織委員長と運営スタッフがたびたび交代した点もオリンピック開催準備に支障をきたした。キム・ジンソン、チョ・ヤンホ前組織委員長は「政治権力によってやむを得ず辞退した」と打ち明けた。船を導く船頭が何度も替わるとオリンピックは求心点を失い漂流した。

文化体育観光部の主要人物が崔順実国政壟断事態と文化界ブラックリスト問題で次々と調査を受け、主務省庁も冬季オリンピックを適切に準備していなかった。オリンピック成功のための複数のイベントが企画段階で失敗したこともあった。

関連イベントの効果薄く

これにより、オリンピックの雰囲気を造成するための最適なタイミングを逃した。オリンピックのようなメガイベントは、1年前に「ブームアップ」に突入する。各種イベントや広報を通じて関心と期待感を高める作業である。特に冬季オリンピックが冬のスポーツ祭典だけに1年前の冬に興味を引いておく必要があった。

遅れて文化オリンピックを標榜し様々なイベントを行っているが、関心はなかなか集まらない。組織委員会は7月だけでも

  • 平昌大関嶺の音楽祭
  • 江陵ジャズエスプレッソフェスティバル
  • 氷テン路地文化祭

などのイベントを開催した。しかし江原道で開催する以外にオリンピックとつながる接点を見つけるのは難しい。外国人を相手にした広報活動も同様だ。海外文化院にオリンピックのマスコット造形物を送ったり、韓流コンサートを開いて雰囲気を盛り上げるくらいのことでは平昌の魅力を十分に伝えることができない。

去る7月22日に、開幕200日を控えて春川駅近くで花火大会が開かれたが血税の無駄に無駄使いと批判を浴びた。平昌地域のある市民団体活動家は、

平昌冬季オリンピックの雰囲気が盛り上がらないからK-POPコンサートや花火などいろいろなイベントをやっているようだが、注意を引くため一回限りのイベントを行うよりも、冬季オリンピックをきちんと広報するための基本的な計画が必要だ

と指摘した。

イ・フィボム平昌冬季オリンピック組織委員長は「ブームアップを通じての入場券の販売はとても重要な課題。下半期には、主にそのような部分に集中するつもりだ」と明らかにした。組織委の関係者は「2002年ワールドカップ当時も国民の関心が薄れたが開幕が迫るとブームアップする傾向があった。五輪開幕が迫って国民的熱気が高まることに期待する」と述べた。

平昌冬季オリンピック組織委員会は11月1日から韓国内でオリンピック聖火リレー開始と共に、大々的な広報と各種イベントを開催しオリンピック熱気を引き上げる計画である。

繁忙期8万ウォンだったモーテル、オリンピック時50万ウォン?

江原道江陵市内で一日を泊まるために江陵駅近くのモーテルを訪れた。1月に訪れたとき一般室で4万ウォンだった宿泊料金は8万ウォンに上がっていた。連休で部屋数が多くないという理由だった。ついでに、来年のオリンピック期間に予約が可能かどうか尋ねた。モーテルの関係者は、「まだ来年の予約は受付けていない。オリンピック期間の宿泊費は社長に聞かないと分からない」と語った。

既にボッタクリ価格が横行

これより少し前にインターネット上であるキャプチャ画像が話題になった。8坪余りの宿泊施設の一日宿泊料金が2名200万ウォン、4人部屋450万ウォン、6人600万ウォンと表記されていた。ネチズンは余りにも不合理な料金設定に「偽造説」を提起したが、結果的に事実だった。ブッキングドットコム、ホテルズドットコムなどのホテル価格比較サイトで確認した結果、平昌のあるペンションが上記の料金を設定していた。

他の宿泊業者も同じだった。記者が直接ホテル価格比較サイトでオリンピック開幕日2月9日、一日宿泊料金を照会した。すでに会場近くの宿泊施設は満室で、競技場から約2km離れた最も安価なゲストハウスの1泊利用料が40万ウォンだった。ペンションやモーテルの多くは、40万〜50万ウォン程度の料金を設定していた。

最も安価な宿泊施設は36万ウォンだったが、ゲストハウスの大部屋でだった。江原道民日報は「江陵のあるモーテルは、オフシーズン料金5万〜6万ウォン、ピーク料金9万〜15万ウォンに設定しているが、オリンピック開催期間の週末宿泊料金を90万ウォンに設定した。近くのホテルも一日宿泊料金を60万〜70万ウォン」と報道した。

先に組織委員会は大会期間中

  • 5つ星ホテル 33万〜59万ウォン
  • 4つ星ホテル 24万〜46万ウォン
  • 3つ星ホテル 22万〜42万ウォン

と宿泊等級別料金のガイドラインを提示した。しかし、組織委員会や地方自治団体が策定した宿泊料金と業者が提示した料金との間の乖離は相変わらずな状況である。

宿泊施設不足が深刻

なぜこのようなことが起こったのだろう。江原道庁によると、

  • 平昌冬季オリンピック期間宿泊推定人数は1日6万人に達する。
  • 平昌などの競技場近くの都市のホテル・コンドミニアム収容人員は1万3000人

開催都市のモーテル・民宿を総動員しても全ての宿泊客を収容することは難しく、襄陽・東海などの周辺地域に宿泊しなければならないのが実情だが、内・外国人が入り乱れて混乱した状況が続出することが予想される。

江陵地域の住民は、「夏の繁忙期にもこのようなことはない」としながら舌打ちをした。彼は「オリンピックの管理者と呼ばれる人々が説明しに来たが、宿泊対策がないので了解を求めただけだった。」と証言した。

江陵宿泊施設空室情報案内システム

江陵市は遅れて宿泊施設別希望料金公開施策を推進することにした。希望料金を全面調査し、8月中に稼働予定の「江陵宿泊施設空室情報案内システム」を通じて公開するという方針だ。競争によって宿泊料金を引き下げようというものである。しかし企業の反応は違った。宿泊業界関係者は「宿泊施設が不足するという話が広がっている状況で、部屋代が急騰するのに誰が安値で予約を受け付けるのか。今さら価格を調整しても、簡単は下がらないだろう」と語った。

これに対して組織委員会の関係者は、「一部の宿泊業者と中間ブローカーが不当な利益を得ようとする傾向がある。選手団やマスコミ宿泊問題は組織委員会で既に十分な計画を持っている」と述べた。一般観戦客などの宿泊の問題についても、「他のオリンピックでも宿泊施設は競技施設から1時間程度の距離にあることが多かった。競技場近くではなく、1時間の範囲の地域宿泊業者に視線を向けると、高価ではないコストで十分利用することができる」と説明した。

第2のリレハンメルなるには

ある専門家は、1994年リレハンメル冬季オリンピックをベストプラクティスとして挙げた。ノルウェーの小都市リレハンメルの人口は2万6000人余り。1994年冬季オリンピック前はリフトもなくわずか3つの斜面だけで運営していた小規模な町のスキー場は、世界中の人々が訪れる名所となった。

夏はトレッキングとハイキングコースに変身して、365日の観光客を迎えている。年間の観光客の数は45万人、毎年185億ウォンの観光収入を上げている。リレハンメル冬季オリンピック組織委員長だったゲルハートハイバグIOC委員は、

平昌を訪れた際、規模や環境面でリレハンメルと似ているという感じを受けた。平昌も素敵なオリンピックを作り出すことができるだろう

と述べた。

平昌五輪組織委によると、平昌冬季オリンピックで外国人39万人韓国人220万人が平昌を訪れると予想している。平昌五輪組織委員会は、江原道の美しい風景や観光資源を世界に知らせる契機になると期待している。

組織委員会は海外からの観光客が入国から出国までカスタマイズ情報を受け取り、オリンピック観戦だけでなくショッピングを楽しむことができる最先端の情報技術(IT)サービスを提供し、経済効果を最大化する計画である。オリンピック施設と江原道の観光資源を連携して観光黒字と投資誘致を引き出し出すという野心も抱いている。